なびの洋裁教室ブログ

自由に簡単にお洋服を作りたい!お気に入りの生地がカタチになっていくワクワク感を体験してくださいね。

CHINA備忘録⑦活動開始

 雲陽に到着してから1ヶ月。

 

工場での活動が始まりました。

 

工場は大まかに言うと、10人くらいの管理者と部署ごとにグループで仕事をする

給料制の工員と、1枚いくらの請負制の工員に分かれています。

 

NAVIは設計室という、日本のアパレルで企画室とか、デザイン室にあたる

部署で仕事を始めました。

 

 

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 刺繍の図案を描く工員たちと。左から優しい小さな人、きれいな新婚さん毛さん、細い将さん、NAVI。

           だんだんと溶け込んでいくNAVIであります。

 

 

 

パターンは高級設計師と呼ばれる年配の男性と、見習の若い男性の2人がいます。

 

ここに配属され、約1ヶ月はテスト、と言うか、

海のものとも山のものとも知れない「専門家」とされる日本人の

実力を試すための関門であったのでしょう。

(NAVIは専門家ではないのですが、最後まで専門家として扱われました。

 協力隊と専門家は別物です。専門家はその道の権威であり、

 待遇もまったく違ってきます。権限や、動かせるお金も違いますし、

 何かを開発する際のリーダーとなるのが専門家という分野になります)

 

ここのパターンナーは特にどこかでパターンの学習をしたわけでなく、

たぶん、古くからの中国伝統の衣服作りを踏襲しているようです。

 

中国の伝統衣服の作り方を詳しく知っているわけではないですが、

NAVIの感じた範囲では、

基本的に平面的な考え方の作りです。

洋服は丸みのある人体が着るので、

立体的な作りになります。

日本の和服は平面の最もたるものですが、

中国は平面的作りで、曲線で身体に合わせている感じです。

 

極端に言うと、

「この人に合ったワンピースを身体にぴったりで作ってください」

と言えば、紙の上にその人を寝かせ、その体に沿って線を引き、

パターンが出来る。と言った感覚です。

 

NAVIから見ると、パターンはかなり問題があるようですが、

工場の意向は高級設計師の地位を失墜させてはならないので、

一緒には仕事はさせない、という方向になってしまいました。

 

なかなか難しいですね。

 

これでは技術の移転も出来ず、誰に何を教えれば良いのか…。

 

この頃、この高級設計師の方には毎日課題を突き付けられ…

パターンのことでしたので、もちろんすべてを粉砕してきましたが…。

面倒なことです。

 

やがて、高級設計師のパターンで生産された商品に問題があって、

NAVIに問題点の解決を相談されました。

ブラウスのギャザー展開のミスだったのですが、

NAVIはうれしかったです。

プライドの高い設計師がNAVIを認めてくれた瞬間であったからです。

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ボケていますが、

工場の手順に沿って、デザインし、パターンを引き、NAVIも刺繍の図案を描き、

刺繍をしてもらい、縫ってもらったドロンワークのブラウスです。

 

 

NAVIに関する工員たちの一番の興味は何だったでしょう?

 

ある日、ひとりの工員がNAVIに

「給料いくら?」 と聞いてきたのです。

それを聞きつけた他の工員がわーーっと

NAVIを取り囲み、で?  で?  と言った顔でNAVIの答えを待っています。

 

NAVIに給料は無く、JICAからは派遣された国の物価に合わせて

「生活費」を支給されます。

工場からの給料名目の支払いはありません。

なので、その旨を答えましたが、

皆さんは納得がいかない表情でした。

 

中国にボランティアという言葉はありません。

日本語なら奉仕、ということになりますが、

ただで人のために奉仕することは考えの外で、理解できないと思います。

 

中国は今も昔も低賃金の奴隷とも言うべき人々で

国の財政を支えていますが、地位がある人や専門性のある人が

真の意味で人々に奉仕することは考えられないことです。

搾取する側とされる側という2種類の立場しかない中国です。

きっとNAVIも高い給料で雇われていると思っていたのでしょう。

 

NAVIの生活は月に300ドル、日本円で当時3万円弱くらいです。

それでも現地の中堅工員の10倍でした。

農民の年収は1万5千円くらい。

一般工員は2万~2万5千円くらい。

当時上海では月収が2万円くらいでしたので、

沿岸部と内陸との収入の差は10倍くらい、

日本との差は100倍というところでしょうか。

 

CHINAは市場開放政策に舵を切って、外資をどんどん入れ込む政策の

真っただ中でした。

 

 

次回に続く。