CHINA備忘録⑥工場を知る。
表通りの風景
工場長との会談が終了し、工場の要求に応えるために、
まずしなければならないことは工場を知ることでした。
前述したように、この工場は鄭州の貿易会社を通して
ヨーロッパ、アメリカ→ドロンワークの製品、
中東→作業服 を生産しています。
ただの生産工場からの脱出を図っての
日本からの協力要請に応えてNAVIがやってきたわけです。
ただ、これも前述したように、
教育部門での派遣ですから、
例えば、もうすでに日本への道筋がついていて、
日本のマーケットに合うような技術の移転で
その受け皿としての人員が確保されていれば、話は簡単です。
さて、工場の中を見てみましょう。
仕事の行程は
1、貿易会社から注文が入る。
2、材料を発注し生地と糸を染める。
3、1枚1枚ステンシル方法で刺繍の図案を写す。
4、刺繍工が刺繍する。
5、出来上がった刺繍を1枚1枚裁断する。
6、縫製工に渡す。
7、釦など付ける。
8、図案のあとを消すために洗濯をする。
9、プレスをして袋詰め。
刺繍製品ですので、1枚1枚丸縫いの手作りのようなものです。
なので、管理生産は行われておらず、
また、工員も社員という身分ではなく、
1枚縫っていくら、という請負制でありました。
生産品の一部、シルクのドロンワーク刺繍のナイトウエア
作業服は刺繍がありませんので、流れ作業での縫製が出来るはずですが、
そういう体制になっていないので、
やはり1着いくらの世界でやっています。
ま、言うなれば巨大なハンドメイド集団、とでも言うべきでしょうか。
3から9までは各工程の担当が決まっていて、
そういう意味では流れ作業的と言えます。
作るモノが1枚断ち必須なので致し方ないのですが…。
日本である程度縫製工場を知る者として、一番驚いたのが、
工場は24時間体制で、
工員に場所と機械を貸しての100%請負システムだ、ということです。
忙しければ工場は不夜城となり、
仕事がなければ昼間でも誰もいない、ということになります。
自室の屋上から工場をバックに。
ひととおり見てから、
この工場の可能性を思案しました。
出来上がった製品は日本市場で耐えられる品質ではありません。
中国物産展に置いてある、ペラペラの刺繍のブラウスを思い浮かべてくださいませ。
刺繍は凝っているけど、シルクって言われても、他がねぇ…。という感じです。
実際に工場の生産レベルとかの把握をするのが先決、と思い、
ひとまず、設計室(デザイン室)の一員となり、まわりの工員に混じって
普段皆さんがやっている仕事を一緒にやってみることにしました。
この頃にはすでに通訳の姚さんはお家のある(嫁がいない)南陽市に
戻りまして、日本人のNAVIひとり。
姚さんは悪い人ではないですが、通訳が居てくれるのに
お願いしないわけにもいかず、
でも通訳してもらうと簡単な話を複雑にしてしまうので
困っていました。
これからNAVIのお粗末な中国語で奮闘するのであります。
この頃、ちょっとした出来事がありました。
工場長が北京から戻ってすぐのこと。(まだ姚さんがいてくれてました)
工場の主要な方々と会食中、
お手伝いさん風の工場長の太太(タイタイ=奥さん)が、
突然NAVIを指さして、大声で何か言ってきました。
NAVIには太太の中国語がわかりません。
姚さんが言うには、
「なんでこの日本人にこのように親切にするのか?
工場長は浮気をした前科がある。またこの日本人と浮気を
したいのだろう」とかなんとか、みんなの前でわめいているらしく、
みなさんは気まずく黙っています。
ちょうど、そのときNAVIの部屋の電話が鳴りました。
NAVIは食堂から脱出して電話を取り…(同期の隊員でした)
声を聞くなり、大声で泣いてしまったのです。
それからも太太のいじめは続き…
しかし、
きっと太太もNAVIは敵ではなく、工場に役立つ人間と認知されれば
いじめも無くなる筈。
とは言え、作業室では工員を集めて、NAVIを指さしながら
何やら悪口を言うのが日常でした。
ある日のこと、いつものように何やら言っています。
太太はNAVIの顔を見てニヤっと笑いました。
NAVIは無言で皆の前を通って、
部屋から出て、ドアを思いっきり足で蹴って閉めて。
そのまま自室に戻り、帰りませんでした。
それから太太の表だったいじめはなくなりました。
中国人になめられてたまるか。
AVIの存在を理解できない人がほとんどです。
でも、心を強く持たねば今後の活動が出来ません。
与えられた2年間、NAVIはいったい何が出来るのでしょうか。
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CHINAかるた
「か」
「カンペイ!カンペイ!ガン!
ひとつのお猪口でまわしのみ」
カンペイ=乾杯、 ガン=飲み干す
CHINAで一般的に飲まれるお酒は「白酒」という、コーリャンなどで
作った焼酎のようなお酒です。駆けつけ3杯で飲まされる習慣と、
他に自分が飲み干したお猪口を相手に渡し、それで飲むのが決まりです。
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